法政大学名誉教授であり、児童文化史研究家であるヘリング先生が、この夏とびきり面白い本『おもちゃ絵づくし』を出版されたのでぜひご紹介したいと思います!
(『おもちゃ絵づくし』本体価格 3,800円 著者:アン・ヘリング 発行:玉川大学出版部)
表紙は今も私たちに馴染みの深い「福笑い」。 |
皆さんは【おもちゃ絵】というものをご存知ですか?江戸・明治期に実用品として大量に出回った錦絵のことなんです。
(※多くの方が浮世絵とも呼んでいるとおもいますが、錦絵とは多色刷りの木版画を指すそうです。)
双六(スゴロク)、着せ替え人形や図鑑。さらに子どもたちが切ったり貼ったり、大人も組み上げたり 今で言うペーパークラフトのように楽しむ 組上燈籠や豆本。本当にたくさんの種類があって これがまた美しく、楽しい!
当時大流行だった芝居=歌舞伎の名シーンを再現できるもの、組み上げて作る雛壇(五人官女から屏風まで、芸が細かい!)、おなじみの昔話が展開する豆本、擬人化された猫の銭湯などなど…。
当時の超一流の絵師たちが描いており、そのデザインや構成の巧みさ・見事さ・ユニークさは今見ても色褪せることはありません。
艶やかで大胆!ユーモアもたっぷり! |
今でこそ錦絵や浮世絵は“芸術”という枠で語られますが、当時の【おもちゃ絵】は庶民が生活の中で楽しむもの。高級品や家宝として飾られるものではありません。ハサミで切られて、楽しんだ後は捨てられるモノも多くあります。
それでも大人、子どもの垣根なく美しく、魅力的なモノを届けようとプロが本気で作る。そしてそれが手にした人々の感覚や暮らしを豊かにし、育まれた美への感覚は後世へと受け継がれていく…。そんな【おもちゃ絵】の精神に、僭越ながらどこか戸田デザインも通ずるところがあるような気がします。
基本的に実用品として使われたものですから、原型を留めている【おもちゃ絵】は貴重。特に切ったり貼ったりするものは、パーツが揃っているものは少ないのではないでしょうか。
ヘリング先生が長年かけて集められたその情熱に、ページをめくるごとに感激するとともに、私たち日本人の根底にこんなに豊かな文化が流れていることにも気付かされます。
難しい美術書ではなく、驚いたり笑ったり。とっても気軽に読み進められます。みなさんもぜひ、お読みになってみてください!古いのに なんだかすごく新しい、そんな感覚を存分に楽しめると思います。